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障害者作業所の工賃とは?給料との違い、B型の平均月額も

ヤンネコ

障害者作業所の「工賃」ってどういう意味?

給料とどう違うの?

工賃は「作業した際にもらえるお金」のことだよ。

給料は雇用契約ありの労働対価なのに対し、工賃は「雇用契約を結ばずに働くB型作業所などで支払われるもの」という違いがあるよ。

ガイドさん

工賃とは、雇用契約を結ばずに働く作業所等で、軽作業などの生産活動をした際に利用者がもらえるお金です。

就労継続支援B型事業所や、一部の就労移行支援事業所、生活介護事業所、地域活動支援センターなどで支給されます。

月額数千円~数万円が相場で、給料とは違い、最低賃金が保障されません。

当記事では‥

  • 工賃の意味
  • 給料や賃金との違い
  • 施設種類ごとの平均月額
  • 作業と工賃額の例
  • 税金や確定申告
  • 支給日/計算方法
  • 工賃規程/工賃向上計画

など、厚生労働省の資料等を参考にわかりやすく解説します。

当サイトの情報は記事執筆時点で収集したものです。厚生労働省等の情報を参考にしていますが内容を保証するものではありません。詳しくは各自治体や事業所等へお尋ねください。

障害者作業所の工賃とは?

工賃とは、雇用契約を結ばない障害者作業所などで、作業をした際にもらえるお金のことです(※)。

以下の福祉作業所等でもらえることがあります。

  • 就労継続支援B型事業所(B型作業所)

    就労困難な障害者が雇用契約を結ばずに働く施設。基本的にどのB型事業所でも工賃支給あり。

  • 一般就労できない障害者が就職のために訓練する施設。基本的には「工賃なし」だが、ごく一部の施設のみ工賃支給あり。

  • 生活介護事業所

    常時介護が必要な障害者に介護、家事、生産活動の機会等を提供する施設。7~8割ほどの施設で生産活動が行われ工賃が支給されている。(※1)

  • 地域活動支援センター

    地域の実情に応じ障害者へ創作的活動や生産活動の機会を提供する施設。生産活動をした際に工賃が支給される。上記3つとは違い、障害福祉サービスではない。

工賃が確実にもらえるのは、就労継続支援B型事業所のみです。

その他の施設は、もらえる施設ともらえない施設があります。

ガイドさん

工賃がもらえるのは「生産活動」を行っている施設だよ。

生産活動とは、製品やサービスを提供するための作業のことだよ。

工賃がもらえる生産活動には、例えば以下のようなものがあります。

生産活動の例

・ケーキ/クッキーの製造

・お菓子の袋詰め

・清掃

・部品検品/組み立て

・事務軽作業

・雑貨づくり

・お弁当販売

・野菜の栽培

工賃は「利用者の意欲/責任感を育む」目的で、各施設が金額を算出して支給しています。

※:その他の意味として、同じく雇用契約を結ばない内職での収入も工賃と呼ばれます(障害者関係なく)。工賃という言葉は、自動車整備の作業料を指すこともあります。

工賃・給料・賃金の違い

広義では、工賃には「モノを製造したり加工したりする際の手間賃」という意味があります。

給料や賃金との比較でいえば‥

工賃は「雇用契約なしでもらう収入」、給料や賃金は「雇用契約ありでもらう収入」という違いがあります。

雇用契約のない工賃は「最低賃金が保障されず一般的に安い」、雇用契約のある給料/賃金は「最低賃金が保障されるので一般的に高い」という特徴もあります。

意味相場
工賃雇用契約なしで作業者に支払われるお金。金額は安いことが多い。月額:数千円~数万円
※最低賃金の保障なし
給料雇用契約を結んだ「労働」への対価として、労働者に支払われるお金。手当や賞与(ボーナス)は除く。月額:数万円~数十万円
※最低賃金の保障あり
賃金雇用契約を結んだ「労働」への対価として、労働者に支払われるすべてのもの。手当や賞与(ボーナス)を含める。

※「給与」という言葉は「賃金」のほぼ同義語です。

ちなみに就労継続支援A型事業所(A型作業所)では雇用契約を結んで働くので、福祉作業所等の中で唯一「給料」が支払われます。

工賃給料
雇用契約なし雇用契約あり
就労継続支援B型
就労移行支援
生活介護
地域活動支援センター
就労継続支援A型
↓対象者や支援内容などの違い↓
A型事業所とB型事業所の違い

工賃の平均月額

工賃がもらえる4つの福祉作業所等の工賃平均月額を紹介します。

ガイドさん

全体平均として最も平均工賃が高いのは、就労継続支援B型事業所だよ。

特に断りがない限り、工賃平均は「一人あたりの月額」で表示します。

それぞれの金額は、参考とした資料の調査年度等が異なるので、厳密には比較できません。参考程度にご覧ください。

就労継続支援B型事業所

B型事業所/作業所の工賃平均は、令和3年度で月額16,507円です(時給換算で233円)。

相場は月1~2万円ほどですが、クリエイティブ系など収益性の高いごく一部の施設では、月10万円以上の工賃がもらえることもあります。

B型事業所では「平均月額3,000円を下回ってはいけない(※1)」「前年度の工賃を都道府県へ報告する」などのルールも定められています。

ガイドさん

ちなみに、A型事業所の給料相場は月額6~10万円ほどだよ。

都道府県によっても大きく平均が異なるよ。

参考:厚生労働省(令和3年度工賃の実績について)

※1:あくまで利用者平均額として最低3,000円が保障されているという意味です。利用者一人の工賃が月額3,000円を下回ることもあります。

就労移行支援事業所

基本的に、就労移行支援事業所では工賃の支払いは行われていません。

しかし、一部の「工賃あり」の施設に限れば、平均で月額18,628円の工賃が支給されています。

就労移行支援では様々な訓練が行われていますが、そのうち工賃が発生するのは事業収益が発生する「生産活動」のみです。

参考:厚生労働省(就労系障害福祉サービスに関する実態調査|平成28年度実績)

生活介護事業所

生活介護事業所の工賃平均は、月額3,974円です(※1)。

※1:工賃支給ありの事業所平均です。

上記と別の調査になりますが「月額3,000円未満の施設が46.3%」というデータもあります。

平均工賃と施設割合
工賃月額施設割合
~3,000円46.3%
3,001円
~5,000円
21.0%
5,001円
~10,000円
21.0%
10,001円
~20,000円
9.1%
20,000円
以上
2.1%

※工賃支給ありの施設のみの割合。不明/無回答は0.6%。

※参考:平成30年度 生活介護事業所(通所型)実態調査報告

「工賃ありの施設」のみの割合なので、工賃なしの施設も含めれば、月額3,000円未満の施設割合はさらに増えます。

参考:独立行政法人福祉医療機構(令和 2 年度|日中活動系障害福祉サービスの経営状況)

地域活動支援センター

地域活動支援センターでもらえる工賃月額は、1万円未満が相場です。

古いデータですが、きょうされん(共同作業所全国連絡会)の2013年の資料によると、有効回答が得られた調査対象の811施設(※1)では、工賃月額の平均が8,595円とのことです。

※1:Ⅱ型・Ⅲ型の単独設置施設のみ。

平均工賃と施設割合
工賃月額施設割合
~10,000円82.2%
10,001円
~15,000円
7.4%
15,001円
~20,000円
3.5%
20,001円
~30,000円
3.7%
30,001円
以上
3.2%

上記の「~10,000円」の割合には、工賃支給なしの施設85か所(10.5%)が含まれています。

参考:きょうされん(2013年12月 地域活動支援センターにおける運営実態調査の結果)

工賃の金額と作業の例

作業所等の工賃は「1日の作業時間」「通所日数」「作業内容」「施設」によって大きく異なります。

当然、作業時間が長ければ工賃は増えますが、同じだけがんばっても施設によって何倍もの金額差が生まれることがあります。

工賃利用日数
作業内容
Aさん96,000円/月1日6時間、週4~5日
・季節野菜の栽培/販売
・ラベル貼り
・事務用品の組み立て/梱包
・ハウスクリーニング
Bさん40,000円/月(※1)1日6時間、週5日
・文字入力(名刺/数値など)
・データ取得(HPより引用)
・アンケート入力/集計
・フォーム(システムへの)入力
Cさん8,000円/月1日5時間、週4~5日
・部品のバリ取り
・ろうそくの計量/箱詰め
・ゴム製品外し
・製品の梱包
Dさん2,000円/月1日4時間、週2~3日
・自転車整備/販売
・除草
・自動車部品組み立て
・電子機器の清掃

※1:交通費込

※参考:サポートセンターこころ、東京デジタルキャリア、LACC稲敷、ACTIVE

金額は時給で決められていることが多いですが、作業量に応じた出来高制を採用しているところもあります。

通所期間に応じて工賃が上がるシステムを取り入れている作業所もあります。

工賃は確定申告必要?税金かかる?

確定申告とは「所得税などの税額を算出するために前年1年間の収入(所得)を税務署へ報告すること」をいいます。

毎年2月16日~3月15日までに申告書を提出します。

福祉作業所等の工賃も雑所得として課税対象ではありますが、年間103万円以下なら確定申告の必要はありません(所得税も0円)。

ヤンネコ

ほとんどの人は確定申告、必要ないね。

工賃は、源泉徴収も年末調整も行われないよ。

ガイドさん

ただし、1年間のうち給料や副業などその他の収入があった場合は、判定基準が変わります。

詳しくは、以下の記事をご覧ください。

工賃の支給日

工賃の支給日は、施設ごとに「工賃規程(後で解説)」に定められています。

翌月の15日または20日、25日に現金で支給する作業所が多いようです。

ガイドさん

封筒に入れて手渡しする施設が多いよ。

工賃の計算方法

工賃は、生産活動の売り上げから経費を差し引いて計算されます。

生産活動の収入 - 経費 = 工賃

B型作業所などの障害福祉サービスでは、運営費をまかなうために給付金が行政から支払われますが、工賃は給付金から出してはいけないことになっています。

就労支援事業だけでなく、生活介護事業も同様です(※1)。

通常の工賃のほかに、皆勤手当てや賞与などを支給する施設もあります。

ヤンネコ

作業所の経営状況も、工賃の金額に影響しそうだね。

特にB型作業所は平均工賃の金額が、もらえる給付金の多さにも直結するし、収益を上げることが求められるよ。

経営状況が悪いと、未払いや倒産につながることもあるよ。

支給日なのに工賃が支払われない場合は、市区町村役場の障害福祉課に相談してみよう。

ガイドさん

※1:参考|厚生労働省(「就労支援事業の会計処理の基準」に関するQ&Aについて)

工賃規程とは?

工賃規程とは、利用者に工賃を支払う際のルールをまとめたものです。

工賃支払規程、工賃支給規程などとも呼ばれます。

施設によって金額が決まるルールや支払い方法が異なるため、施設は工賃規程としてまとめておき、利用者に示す必要があります。

工賃規程の内容【例】

・工賃額決定の算出方法やルール

・工賃の支給額

・工賃の支給日や支払方法

・施設外就労/施設外支援の工賃

トラブルを防ぐため、利用者も工賃規程にしっかり目を通しておきましょう。

ガイドさん

施設は工賃規程を整備しておかないと、実地指導というチェックで行政から指摘されるよ。

工賃向上計画とは?

ガイドさん

障害者の作業工賃の安さが課題になっているよ。

工賃向上計画とは、障害者作業所(主に就労継続支援B型)の工賃アップを目標にした厚生労働省主導のプロジェクトのことです。

雇用契約を締結して就労することが困難な障害者が、地域において自立した生活を実現するためには、工賃の向上を図り、障害年金とあわせて地域で生活できる水準まで工賃を引き上げることが必要。

引用元:厚生労働省(工賃向上計画支援事業)

平成19年度から「工賃倍増5か年計画」が開始され、平成24年度以降は3年毎に各作業所が「工賃向上計画」を作成して実施することとなっています。

工賃向上計画の主な内容

・事業所の現状把握

・生産活動の分析

・目標工賃額の設定

・工賃向上のための具体的な施策づくり

都道府県ごとの書式に従って計画を策定し、期限までに提出します。

書式や記入例については、各都道府県のHPをご覧ください。

記事執筆時点では、令和3年~令和5年度の3年間が対象です。

新規指定の事業所は指定時~令和5年度までの計画を作成します。

ヤンネコ

行政や作業所も、工賃向上のために努力してるんだね。

最後に‥

当記事のまとめ

・工賃とは「雇用契約を結ばない障害者作業所等で支払われる作業対価」(※1)

・工賃は「雇用契約なしの障害者作業所等での収入」、給料は「雇用契約ありの一般企業やA型事業所での収入」という違いがある

・工賃平均月額の目安(※2)
就労継続支援B型:16,507円/月
就労移行支援:基本なし(一部のみ|平均18,628円/月)
生活介護:3,974円/月(※3)
地域活動支援センター:一部のみ(10,000円未満/月)

工賃も課税対象だが、年103万円以下なら確定申告必要なし

・支給日は翌月15日、20日、25日など

・計算方法は「工賃=生産活動の収入-経費」

・施設は工賃規程や工賃向上計画の策定が必要

※1:広義では「モノを製造したり加工したりする際の手間賃」という意味。作業所に限らず、内職で得る収入、自動車整備の作業料なども工賃と呼ばれる。

※2:あくまで目安です。参考資料や調査年度が異なるので厳密な比較にはなりません。

※3:工賃ありの施設(全体の約7~8割)の平均額

当記事が参考になれば幸いです。

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