「A型事業所は助成金目当てだからやめとけ」って本当?
昔は助成金目当ての施設も少なくなかったけど、今はそんなことないよ。
就労継続支援A型事業所(A型作業所)は「助成金」や一人あたり1日5,000~10,000円ほどの「給付金」を行政からもらっています。
10年ほど前までは、確かに助成金目当ての企業も多く参入し「施設の都合で利用者を辞めさせる」など、ひどい実態もありました。
しかし、現在では(一部の悪質な作業所を除き)多くのA型事業所は健全に運営されています。助成金目当てではありません。
「助成金はいくら?」「お金は何に使われている?」「不正の手口」など解説します。
ちなみに筆者は、A型事業所に7年通っていましたが「本当に通って良かった」と思っています。
↓通った感想まとめ
就労継続支援A型とは? 7年通った感想や体験談
A型事業所自体は悪いものではありません。
ただ、作業所には当たりハズレがあります。施設選びは慎重に行いましょう。
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A型事業所は助成金目当て?
多くの就労継続支援A型事業所は「助成金目当て」や「金儲け」のために運営しているわけではありません。
A型事業所の運営を理解するには、収入源や支出について知る必要があります。
助成金・補助金はいくらもらえる?
A型事業所が行政からもらえるお金は、主に以下の2種類です。
- 訓練等給付費(自立支援給付)
就労支援等の障害福祉サービスを提供する事業者が毎月もらえる給付金です。就労支援事業所の運営費は、大半がこの給付金でまかなわれています。
- 特定求職者雇用開発助成金
雇用が難しい人を雇用した場合に支給される助成金です。A型事業所では「高齢者や障害者等を継続して雇い入れる場合」の特定就職困難者コースが申請できます。
上記のほかにも、A型事業所がもらえる助成金・各自治体の補助金はいくつかありますが、代表的なものはこの2つです。
給付金(訓練等給付費)は利用者1人あたり1日5,000~10,000円ほど、月額15万円前後が支払われています(※1)。
利用者が20人なら、月額300万円ほどの給付金が行政からもらえます。
特定求職者雇用開発助成金(特開金)の金額は以下の通りです。
対象者 | 支給額 | 助成期間 | |
---|---|---|---|
短時間労働者 | 重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者 | 80万円 | 2年 |
短時間以外の労働者 | 重度障害者等を除く身体・知的障害者 | 120万円 | 2年 |
重度障害者等(※1) | 240万円 | 3年 |
※中小企業事業主に対する支給額および助成対象期間です。
※「短時間労働者」とは、一週間の所定労働時間が、20時間以上30時間未満である者をいいます。
※1:「重度障害者等」とは、重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者及び精神障害者をいいます。
多くのA型事業所では短時間労働なので、特定求職者雇用開発助成金が2年間で80万円(半年ごとに20万円)もらえます。
1日6時間以上の勤務であれば、最高240万円がもらえます。
なお、助成金や補助金をもらうには申請が必要です。すべてのA型事業所がもらっているわけではありません。
2年でクビになるって本当?
昔の話だよ!今はそんなことないよ!
A型事業所の悪い評判のなかには「2年通うと解雇される」というウワサがあります。
このウワサが「助成金目当て」や「おかしい」と言われてしまう大元かもしれません。
10年ほど前までは、先ほど説明した「特定求職者雇用開発助成金(特開金)」のしくみを悪用して、以下の手口で金儲けしようとするA型事業所が問題になっていました。
助成金制度悪用の流れ:昔の話
1.利用者が入ったら特開金を申請して受給し始める
2.2年経って助成金が支給終了すると利用者を辞めさせる
3.新しい利用者を雇って特開金を受給する
4.1~3を繰り返す‥
なかには施設をいったん閉鎖・廃止してリセットし、新たに立ち上げたA型事業所で受給し始めるケースもありました。
しかし、これは昔の話です。
平成27年10月から「一定の離職率を超える場合は不支給(※1)」となり、利用者を簡単にはクビにできなくなりました。
事業主都合での「解雇」および「任意退職の勧奨等」があった場合も、不支給かつ3年間同一コースでの新規申請ができなくなります。
なので、現在は「2年通ったらクビになる」と心配する必要はありません。
さらに「給付金から給料を支払ってはいけない」というルールの厳格化もあり、助成金・給付金目当てのA型事業所は大きく減りました。
給付金や助成金に頼らず、障害者たちの仕事で利益をしっかり上げねばならなくなったというわけです。
障害者のための支援なのに、金儲けのために運営するのはおかしいもんね‥。
儲けのしくみ/収益モデル
就労継続支援A型事業所の主な収入は以下の4種類です。
A型事業所の収入源
・給付金(訓練等給付費)
・利用者が行う仕事の売上
・助成金や補助金
・利用者からのサービス利用料(※1)
上記のうち上の2つ「給付金」と「利用者の仕事(生産活動)の売上」が収入の大半を占めます。
「給付金から利用者の給料を支払ってはいけない」ルールにより、利用者の給料は「利用者の仕事の売上」から出さねばなりません。
職員の人件費や光熱費等の経費は、給付金から出せます。
給付金の金額は「利用者の平均労働時間」「生産活動の収支」などから、スコア方式で基本報酬が決まり、「送迎の有無」など細かい加減算を経て最終的な支給額が決まります。
給付金は、実際に利用した日数で決まるから「通所人数が多い」ほうが多くお金をもらえるよ。
休みがちな利用者が多いと給付金は減るってことだね。
例えば「20人が利用」「1人1日あたり8,000円」「利用者の平均通所日数が20日/月」なら、作業所には1か月で320万円の給付金が入ります。
就労移行支援や就労継続支援B型ほどではありませんが、給付金はA型事業所の収入の大部分を占める重要な収入源です。
給付金は、通所した利用者の人数分しかもらえません。
今の作業所が「より多くの利用者に通所してほしい」と思うのは、金儲け・助成金目当てのためというより「利用者が通わないと赤字や倒産につながってしまう」からです。
施設運営できないと利用者も困っちゃうしね‥。
就労移行支援
悪質な不正の実態!?
なんjとか、2ch/5chでウワサがあるけどどうなの?
健全に運営しているA型事業所が大半ですが、実態としては、現在でも不正行為をするブラックな作業所も一部あります。
例えば「虚偽申告による給付金の不正請求」です。
給付金の金額は、国保連という機関に施設自ら申告した内容で計算されます。
そのため「ウソの申告をして給付金を増やそうとする不正(架空請求)」ができてしまうのです。
不正請求あるある
・利用日数の水増し
・個別支援計画を未作成なのに申告しない
・サビ管不在なのに申告しない
悪質なA型事業所には「指定の一部効力停止」や「指定取消」など厳しい行政処分が下されます。
不正請求の場合、数百万~数千万円の給付金の返還を行政から求められることもあります。
不正を訴える窓口
不正を告発したい場合は、可能な限り証拠を集めて、管轄の都道府県(または指定都市、中核市)の福祉課へ通報しましょう。行政の判断によっては施設に監査が入ります。
お金は何に使われている?
給付金だけで「月に数百万円」の収入が得られるA型事業所ですが、具体的にどのようにお金が使われているのでしょうか?
利用者数20人での一例を見てみましょう。
項目 | 費用(月額) |
---|---|
職員の人件費 | 管理者(サビ管兼務)30万円 職業指導員1名20万円 生活支援員(常勤)1名18万円 生活支援員(非常勤)1名10万円 賃金向上達成指導員1名18万円 |
利用者の人件費 | 160万円(20名×8万円) |
建物賃料 | 15万円 |
水道光熱費 | 5万円 |
通信費 | 3万円 |
法定福利 | 18万円 |
雑費 | 20万円 |
合計 | 317万円 |
※参考:未来塾「収益シミュレーション」
上記の場合、最低でも1か月「317万円」の収入がなければ赤字です。
サービス管理責任者を別で雇ったり、利用者集めのために広告費を掛けたりすると、さらに数十万円の費用が必要になります。
おいしいビジネスモデルかと思ったけど、出ていくお金も割とあるんだね。
出費の大半を占めるのは「人件費」です。
障害福祉サービスは「利用者〇人あたり職員〇人必要」といった人員配置基準があるため、スタッフを決められた人数以上雇わなければなりません。
それに加え、就労継続支援A型は利用者に「最低賃金以上の給料」を支払う必要があるので、利用者の人件費もかさみます。
また、給付金や助成金というと「何もせずにお金が入ってくる」という楽なイメージがあるかもしれませんが、実際には職員には職員の仕事がたくさんあります。
職員の仕事内容の例
・支援計画の作成
・経理や事務
・利用者への作業指導
・利用者からの相談や苦情受付&トラブル対処
・関係機関とのやりとり
・業者とのやりとり
・利用者集め
・利用者ができる仕事探し&手配
・利用者の送迎
「行政からたくさんのお金が入り」「職員が支援して環境を整えてくれる」からこそ、一般企業で働けない利用者でも最低賃金以上のお金がもらえるのです。
一般企業に比べると給料は少ないですが、A型事業所が障害者から労働力を搾取しているわけではありません。
就労移行支援
経営の実態!赤字施設は何%?
黒字の作業所も多くありますが、就労継続支援A型事業所の経営は簡単なわけではありません。
厚生労働省の資料等から、経営実態を見ていきましょう。
ちなみに3つの就労支援サービスの中では「就労移行支援」が一番儲かってるようだよ。
令和5年度の経営実態調査では、就労継続支援A型は年間売上が平均4,495万円、支出が平均4,366万円で全体的には黒字となっています。
なかには大きく儲けている作業所もありますが、赤字の施設も約41%あるとのことです。
黒字 | 赤字 |
---|---|
約6割 | 約4割 |
A型事業所は「一般企業等で働けない人」を対象にしているので、正直、利用者の生産性はあまり高くありません。
「生産性を上げたいが利用者に無理はさせられない」というジレンマは、職員たちの悩みどころです。
自主事業を始めるなど、利用者に給料を払えるだけの工夫も経営には必要になってきます。
助成金や給付金のルールが変わった現在では「楽して稼げる」と思って参入する業者はすぐにつぶれるでしょう。
A型事業所の数自体は年々増え続けているよ。
まとめ
- 昔は助成金制度を悪用するケースがあった。
- 「離職率25%超は特開金不支給」「給付金から賃金支払うのはNG」など経営ルールが厳しくなった
- 年々制度が改善されることにより助成金目当てなど悪質なA型事業所は減っている
- 現在も一部に不正する施設はあるが大半は健全
- これからA型事業所に通う人は「心配しすぎる必要はない」けど施設選びは慎重に!
助成金や給付金があるからA型事業所は運営できています。
厳しいルールがなかったころは、たしかに金儲けのため参入する企業も少なくありませんでした。
しかし、それは昔の話で、現在は制度の改善により、障害者支援施設の健全化が年々進んでいます。
A型事業所にも当たりハズレがあるのは確かなので、利用する前には施設の評判をぜひ確認しておきましょう!
見学では、施設の雰囲気や職員の態度などもチェックしよう。
当記事が参考になれば幸いです。
就労移行支援